#3 “_ for good”立ち上げ1年を振り返る(後編)

「study for good」は、「学ぶ者」として消費者と作り手をつなぐ橋渡し役を担う私が「ものづくり」にまつわるあらゆるテーマをピックアップして、皆さんと一緒に学んでいくコンテンツです。
今回は、「_ for good」立ち上げから約1年が経ったいま、皆さんと一緒に学んできたことをいまここの私だからこそ見えている視点を交えて振り返る特別回の後編です。
目次
- “エシカル消費”について学ぶ
- “日本の繊維産地”について学ぶ
- 次回予告
3. “エシカル消費”について学ぶ
5月には、「Z世代と考える、エシカル消費のこれからー海洋問題とサステナブル商品開発」と題して、海洋保全活動を積極的に行う学生団体NAMIMATIの壇上さんをお招きし、消費者と生産者の立場を超えて、エシカル消費への向き合い方について考え語り合いました。もののストーリー、つまり商品の背景が伝わってくるということが、消費者にとっては店頭で「手に取る意味」になるということ、それがエシカル消費に繋がっていく可能性を、改めて学びました。
★一方で、繊維業界のプレイヤーである私たちが、ファッションを「つくり続けていく意味」というのも考えなければならないと、そう、振り返る中で思い出しました。
9月には、繊研新聞社主催「繊研サステイナブルコミュニティ―」へ「_ for good」が企画協力し、「Z世代のサステイナブル消費のリアル~買いたくなるエシカル商品って何?~」をテーマにしたセミナーを開催しました。ここでは、普段は一堂に会する機会が滅多にない、繊維商社、アパレル企業の品質管理職、ブランドデザイナー、学生団体のそれぞれに身を置き活躍するメンバー同士で、自分の立場から見えているエシカル・サステナブルについて自由に語り合いました。
語りの中で明らかになったのは、消費者と作り手の間にある、エシカルやサステナブルについてのイメージ、課題感、求めることについてのギャップ。お互いが等身大で対話し、「同じ方向を向く」ための努力やきっかけの必要性に改めて気づかされました。
最近よく見る、商品につくQRコードについての話題でも盛り上がりました。スキャンをすると、例えば作り手の顔が見えたり、どこでどうやって作られたのかが一目でわかったりする仕組み。ただ、消費者と生産者が向き合い語り合う中で、なかなかスキャンまでのアクションに至らないことも分かりました。
★振り返ると、「ものの背景を知りたい」と思う仕掛けと、知った後にそれがものへの愛着に繋がる仕掛け、その仕掛けを考えていく役目こそが作り手側には求められていると思いますし、私はその役目を果たしていきたいと思いました。

10月には、株式会社Lentree(ラントレ)とコラボし、同社の田守さんと、河田フェザー株式会社の恋塚さんをお招きして、初の参加型オンラインイベント「「昭和」と「令和」で考える“かっこいい”エシカル」を開催しました。
まず、あえて「エシカル」を脇に置き、各世代の「かっこいい」の違いからそれぞれが育ってきた環境や価値観の違いを理解し合い、そのうえでそこから見えてくる「これからのエシカル」に必要な考え方をともに探り合うというプロセスは、私にとって非常に刺激的なものでした。
★いわゆる「Z世代」として、作り手初級者として、エシカルやサステナブルを「あたりまえ」に真剣に考えている消費者としての私の視点が決して絶対的なものではないこと、ただ「正しいあり方を押し付ける」「啓蒙する」だけでは理解を得たり浸透させたりということが叶わないということを、改めて気づかされました。

4. “日本の繊維産地”について学ぶ
日本各地には、長い時代をかけて繊維産業が発展してきた地域があります。繊維産業に飛び込むまで、私はこんなにもたくさんの繊維産地が国内にあることすら知りませんでした。9月には、株式会社糸編の宮浦様にお誘いいただき、「_ for good」のメンバーは、ウール織物で有名な尾州産地の工場を訪問させていただきました。その宮浦さんをお招きして、「日本のものづくりを支える産地の“いま”と“これから”」を開催しました。
【アーカイブ配信中】日本のものづくりを支える産地の“いま”と“これから” | __ for good(オウンドメディア)| TAKIHYO FOR GOOD(タキヒヨー株式会社のサステナブルサイト)
私は、アパレルのものづくりにおいて、原料から消費者に届くまでのサプライチェーンを繋いでいく非常に重要なポジションである繊維商社で働き始めてから、ものづくりの原理原則を学ぶ過程で、「サステナブル」を言葉として発することだけは簡単でも、実際に取り組む際には複数の壁が必ず存在することを、実務を通して経験してきました。
例えば、町工場のような、家族経営で営むような工場が、驚くほどおもしろい生地を生み出していて、多くのブランドから注目を浴びている。そんな嬉しい状況がある一方で、ブランド側はサステナブルに関する規制を抱えてサプライヤーに要求をする。そんなとき、適応できない工場をサプライチェーンから外していくことが、自分の立場のみを考えた場合には楽なのかもしれません。ですが、「働くひと」がいる景色、ものの背景を思い浮かべたときに、すべきことはそうではない気がします。
★ここで、5月のウェビナーを振り返り、残った課題「つくり続けていく意味」について。サステナブルを考えるとき、どうしてもリサイクルできるだとか、オーガニックだとか、そういったことばかりを主張しがちなことがあります。もちろんそれも大切ですが、作り手の雇用を守ることを疎かにしてはいけないはずです。一度で100%のサステナブルを実現しなくても、いまできる数%の積み重ねを認め支え合うバランスを仲介していくことが、私が繊維商社でものづくりを続けていく意味だと考えました。
ウェビナー直後には、宮浦さんが産地講座の講師として参加した公益財団法人尾州ファッションデザインセンター主催「BISHU展」にもお誘いいただき、国内産地の生地を活かしたものづくりに関心高い主にデザイナーの方々に向けた講座で、産地とサステナブルについてお話しさせていただきました。
2024/25 Autumn & Winter Bishu Material Exhibition
その後、宮浦さんとは度々お会いしており、会うたびに多く刺激をいただいております。
5. 次回予告
今回は、リジェネラティブ、エシカル消費、国内産地のテーマで語り合ったウェビナーを中心に、「_ for good」の1年の歩みについて振り返ってみました。次回は、これまで開催した展示会やイベントの振り返りを通して、学びの共有をしたいと思います。
プロフィール

執筆
國澤 あや乃(くにさわ あやの)
サステナブルセクションプロダクションチーム。タキヒヨーのものづくりやビジネスに取り組む姿勢に魅力を感じ、2023年入社。「学ぶ者」としての視点から_ for goodに関わり、サステナビリティのプロフェッショナルを目指す。