TAKIHYO FOR GOOD(タキヒヨー株式会社のサステナブルサイト)

サステナブルの補助線ー「リジェネラティブ」を整理する①サステナブルと「イコール」ではない?

環境問題、社会問題…、現代社会には様々な課題が山積しています。
繊維・ファッションの世界でも、問題意識を強く持ちながら「何かしたいけど、何をすればいいのかわからない」「自分一人、自社一社にできることなんて限られている」と悩むプレイヤーの方々がたくさんいます。
「_ for good」ファシリテーターの森によるコラムシリーズ「サステナブルの補助線」は、そんな等身大の悩みについて皆さまと共に考え、未来への手がかりを探る場所。
サステナブル、エシカルといった領域やそれに関心を持つ業界人・消費者が気になるキーワード・概念を軸に、「分からないことを分からないなりに考える」ための思考の道筋を共有します。

目次

  1. はじめに
  2. サステナブルとリジェネラティブ
  3. リジェネラティブの新しさと独自性ーキーワードは「ホリスティック」?

はじめに

近年、サステナビリティに対する関心の高まりにともない、これまでに馴染みのなかったさまざまな概念や考え方を目にする機会が増えています。

「リジェネラティブ」という言葉もその一つ。サステナビリティに関心が高い人を中心に重要ワードとして認知が広がってきてはいますが、まだまだ「サステナっぽいこと」「新しいエシカル」として気になるけど、詳しくは分からない・・・という方も多いのではないでしょうか。

実は、リジェネラティブは「サステナブルの中の一つ」に留まらない幅広さ、奥深さをもつ(私たちにとっては)まったく新しい概念。私自身もまだまだ完全に本質をとらえられてはいませんが、学べば学ぶほどその理解のためにはいろいろな知見を踏まえた思索が必要であることを痛感しています。

本コラムでは数回にわたってリジェネラティブを取り扱い、私がリジェネラティブを理解するために引いてみた複数の「思考の補助線」を共有していきます。

サステナブルとリジェネラティブ

私たちは昨年、業界に先駆けて繊維産業の作り手におけるリジェネラティブの旗手、プラティバシンテックス社をゲストに招いてウェビナー「サステナブルの新潮流“リジェネラティブ”をインドの生産者と考える」を開催しました。

【アーカイブ配信中】サステナブルの新潮流“リジェネラティブ”をインドの生産者と考える | __ for good(オウンドメディア)| TAKIHYO FOR GOOD(タキヒヨー株式会社のサステナブルサイト)

このウェビナーでは参加者の方に親しんでもらいやすいよう、リジェネラティブを「サステナブルの新潮流」と表現しましたが、プラティバ社の皆さんのお話をうかがい、その後学びを深めるうちに、リジェネラティブを「サステナブルの一部」ととらえることで取りこぼされる豊かさがあることに気付かされました。

リジェネラティブについての詳しい説明については_ for goodの「学ぶ者」國澤さんのコラムに譲り、ここではリジェネラティブとサステナブルの志向性の違いについて整理したいと思います。

study for good -「学ぶ者」國澤あや乃がいま考えること #2 | __ for good(オウンドメディア)| TAKIHYO FOR GOOD(タキヒヨー株式会社のサステナブルサイト)https://takihyo.jp/for-good/1443/

サステナブルは環境に対しての「マイナスをゼロに近づける」アプローチ、リジェネラティブは「プラスを増やしていく」アプローチ、とよく表現されます。

サステナブルは環境負荷をできる限り軽減し、文字通り「持続可能な」形、現状のシステムを維持していくことを目指し、リジェネラティブは「再生」の原義通り、自然の回復力や生産性を高め、より良い状態へと再生することを目指す、という構図。近頃耳にすることが増えた「ネイチャーポジティブ」という概念とも重なって見えてきます。

こう考えると、確かにリジェネラティブはサステナブルの「一歩先」の概念のように思えます。「リジェネラティブはサステナブルの発展形」といった表現をされるのも、このような図式に基づいているといえるでしょう。

リジェネラティブの新しさと独自性ーキーワードは「ホリスティック」?

しかしリジェネラティブは、単にサステナブルの「延長上」に位置するものではありません。リジェネラティブを学び考えるほど、むしろその延長線に留まらない部分にこそ、リジェネラティブを理解するための手がかりが転がっているように感じられます。

プラティバシンテックス社の方のインタビューで印象的だったのは、たびたび現れる「ホリスティック」という言葉。

Holisticー全体論的な、総体的なといった訳をあてられるこの表現がリジェネラティブを行う当事者の口から何度も語られた事実は、リジェネラティブをより深く理解する上で大きな手掛かりとなる気がしています。

次回の「サステナブルの補助線」では、部分と全体の有機的なつながりを重視するホリスティックという概念をテコに、生態系のバランスを回復させることで全体最適を目指すリジェネラティブの在り方をさらに深掘りしていきます。

プロフィール


森 康智(もり やすとも)

採用プロジェクトチーム兼広報・IRチーム。2014年に東京大学大学院修了後、新卒でタキヒヨーに入社。新卒採用、キャリアコンサルティングやPRの専門知識を生かし、多様な人々の「問いと語り」によるシナジー創出を目指す。_ for goodのファシリテーター。