TAKIHYO FOR GOOD(タキヒヨー株式会社のサステナブルサイト)

ある日の視点 日常から #1

#1 “エシカル消費”

日常の何気ない疑問や気づきをきっかけに語り合うシリーズ企画、「ある日の視点 日常から」。
厳密でアカデミックな議論ではなく、完全な“正しさ”や一義的な“答え”を追わない会話。
その中から見えてくるもの、生まれる新たな問いもあるかもしれません。
今回はNY支店の鈴木と一緒に、「エシカル消費」をキーワードに語り合いました。

<5/21エシカル消費について、学生団体と共に考えるウェビナーを開催しました>
【アーカイブ配信中】Z世代と考える、エシカル消費のこれからー海洋問題とサステナブル商品開発 | __ for good(オウンドメディア)| TAKIHYO FOR GOOD(タキヒヨー株式会社のサステナブルサイト)

森:
今日は、「エシカル消費」って何だろう、というテーマで語り合ってみたいなと思います。一言で「エシカル消費」って言っても、きっと何が「エシカル」かっていうのはそれぞれの中で違うんじゃないかなっていう気がしていて。それぞれが思う「エシカル」が違うのはもちろんなんだけど、国によっても傾向が変わるのかなっていうのも聞いてみたくて、今回はNY支店の鈴木さんも呼びました。

鈴木:
まず、アメリカでは「エシカル消費」ってあんまり聞かないんですよね。どちらかというとアメリカでは「responsible(責任のある)」をよく使う気がします。今回森さんから「エシカル消費」テーマにフリートークしましょうって声をかけてもらって「エシカル消費」について調べたら、日本ではかなりメジャーなコンセプトで、そのことにまず驚きました。

國澤:
「サステナブル」が浸透する途上にある日本で広がる概念と、アメリカでよく使われている言葉に差があるというのがとても興味深いです。私も今回のテーマを受けて、エシカル消費についていろいろ調べたのですが、日本の中でもエシカルへの取り組み方は自治体によってさまざまな印象です。

森:
僕はエシカル消費っていうのは行動というより自分の「姿勢」だと思っていて。要は何がエシカルかは自分の軸で決めるしかないので自分に問い続ける、その姿勢。一方で「responsible」っていう考え方って、「守るべき規範」が外側にあって、それに対して企業や個人が責任を負わねばならないという感じがする。エシカル消費は過渡期にある日本だからこそ広まった概念かもしれませんね。

國澤:
消費についての自分の軸を考えるときに、「好き」がフックになりそうですね。日本におけるサステナビリティ概念が、消費者の間でまだ“ふわっとしている”中で、自分は海が好きだとか、動物が好きだとか、個々にこだわりたい部分を選んで購買行動に反映しようとする傾向がある気がしています。一方で、欧米ではいろいろな法規制が生まれているように、明確な根拠を求められる動きが強まっていますよね。

鈴木:
先日、コロンビア大学のサステナブルフォーラムで話があったのですが、結局「サステナブルなことをしたら企業にとってプラスになるよ」という任意な感じにすると全然取り組みが進まず、「サステナビリティに対応しないと損するよ」という法規制をかけることでみんな真剣になるという話がありました。これは私たちサプライヤーにとっても耳が痛い話ですね。

森:
行動経済学で「損失回避バイアス」と言ったりしますが、人は獲得を強調されるよりも損失を強調される方が、より影響を受けるそうです。日本においても、そのような法規制や外的な「しなければ」の動きが強まっていくことが予想されています。國澤さんが普段やっている国際認証の業務がまさにresponsibleが求められたときに重要な意味を持ってくるよね。

國澤:
私は今、海外の取引先さまからのサインバック書類対応※1のためZDHC※2について勉強していますが、国内仕入先さまと海外取引先さま対応業務を通してつくり手側の間にも温度差があることを実感しています。日本国内の仕入先工場の現状として、サステナブル商材は取り扱いがあっても、ZDHCは浸透していません。世界を舞台にするなら、製品自体はサステナブルなのは当たり前。その上で、日本企業も製造過程での根拠を可視化する波がいつか迫ってきそうです。

※1 サインバック:契約書等の内容に合意する場合に、署名をして相手先に戻すこと。ここでは主にブランド側からサプライヤーに提示される「遵守すべき項目」への対応の可否が問われる。
※2 ZDHC:Zero Discharge of Hazardous Chemicalsの略。繊維・皮革産業において有害物質の排出をゼロにするための活動をしている非営利団体。オランダのアムステルダムに本部を置き、テキスタイル、レザー、アパレル、フットウエアなどの企業が多く加盟している。

鈴木:
こちら(NY)では、「あの日本なら当然できる」というイメージが強いので、ブランド側に「できない」と説明すると、イメージとのギャップに驚かれることがあります。「できません」と完全に言い切るのではなく「これはできるけど、こちらはこれから対応していく」というような双方向のコミュニケーションが必要だと思います。

森:
法規制への対応にも、こちら側の「いまここ」をきちんと説明して、課題に対して誠実に取り組んでいるという姿勢をきちんと示していくということが重要になってくるということですね。このメディア「_ for good」は難しいからこそ「みんなで一緒に考え合う」場として始めたものですが、そういった対話の姿勢というのはこれからのエシカル消費、responsibleなビジネスを創り上げていく上で大事なんだな、と改めて感じました。

サステナブル、エシカル、そしてresponsible。
それぞれの国におけるあり方や取り巻く環境、使われるワードの違いから「語り」が生まれました。

まだまだ結論は出ないけれど、やはり「みんなで一緒に考える」ことが未来を形作るためには大切なようです。

プロフィール


鈴木 真奈美(すずき まなみ)

入社後3年で海外研修制度に応募しボストンで語学研修を受け、MBAを取得。2014年からニューヨーク支店勤務。メインの業務である北米ブランドへの生地提案をする中でサステナビリティへの知識を深める。欧米における法規制の情報を素早く収集し、タキヒヨー全体のノウハウや知識の蓄積に貢献している。


森 康智(もり やすとも)

採用プロジェクトチーム兼広報・IRチーム。2014年に東京大学大学院修了後、新卒でタキヒヨーに入社。新卒採用、キャリアコンサルティングやPRの専門知識を生かし、多様な人々の「問いと語り」によるシナジー創出を目指す。_ for goodのファシリテーター。


國澤 あや乃(くにさわ あやの)

サステナブルセクションプロダクションチーム。タキヒヨーのものづくりやビジネスに取り組む姿勢に魅力を感じ、2023年入社。「学ぶ者」としての視点から_ for goodに関わり、サステナビリティのプロフェッショナルを目指す。


伊藤 千鶴(いとう ちづる)

広報・IRチーム。社内外の広報、情報発信に長く携わってきた“社内ジャーナリスト”。豊富な執筆、編集経験を生かし、_ for goodでは「中の人」としてライティングなどを担当。

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