TAKIHYO FOR GOOD(タキヒヨー株式会社のサステナブルサイト)

ものづくりの源流を訪ねて ひつじサミット尾州密着取材 #1

上編「三星グループ」

「_ for good」のメンバーが、さまざまな“ものづくり”の在り方を学び、価値の再発見をするシリーズ企画「ものづくりの源流を訪ねて」。
第1回目となる今回は、世界三大毛織物産地として知られる「尾州」の活性化を目的としたイベント「ひつじサミット尾州」に密着したレポートを全3回にわたってお届けします。

「尾州」とは

岐阜県羽島市から愛知県一宮市にかけたウールの一大産地。木曽川がもたらす自然の恵みによって古くから繊維産業が発達し、現在ウールの国内生産量の6割を占めています。イタリアのビエラ、イギリスのハダースフィールドと並び、世界三大毛織物産地と称され、その高い品質は国内外から高く評価されています。

「ひつじサミット尾州」を開催する意味

ウールの持続可能性と魅力を産地全体で発信することで地域と産業の活性化を図ろうと2021年に初開催された産業観光イベント「ひつじサミット尾州」。回を重ねるごとに賛同者が増え、4回目の開催となる2024年は、10月25日~27日の3日間、37箇所でオープンファクトリーやイベントが実施され、産地の“ものづくり”に触れようと全国から観光客が集まりました。

尾州産地は、高いものづくり力が世界で認められている一方で、コストメリットを求める風潮や後継者問題など、さまざまな課題を抱えています。尾州産地の未来を考える若い後継者たちが“アトツギ”として尾州産地に新風を巻き込むことで、尾州産地の活性化と業界全体の“これから”を形づくるためのムーブメントにしていこうという狙いです。

ひつじサミット尾州

「__ for good」と「ひつじサミット尾州」との出会い

2024年9月19日に「__ for good」で開催したウェビナー「日本のものづくりを支える産地の“いま”と“これから”」に先駆け、「_ for good」のメンバーが、尾州産地の魅力やその一方で産地が抱える課題について自分たち自身の目で見て、感じるために糸編の宮浦さんが東京都と一緒に開催した「尾州ツアー」に参加しました。そこで尾州産地のこれからを考える中心人物であり、ひつじサミット尾州の発案者でもある三星グループの代表 岩田 真吾さんと出会い、対話する中で、尾州産地全体で“一緒に”地域を盛り上げていこうというひつじサミット尾州と、ファッションやものづくりのこれからをみんなで“一緒に”考えようという「_ for good」のコンセプトが重なり、今回の密着取材が実現しました。

(写真左)三星グループの“アトツギ”として産地の活性化に取り組む岩田真吾代表

「ひつじ団員」に密着!!尾州産地の魅力を再発見

密着取材に協力してくれるのは、東京と山梨からはるばる参加した福沢 大貴(ふくざわ だいき)さんと田上 綺架(たがみ きっか)さん。2人とも大学卒業後に文化服装学院でファッションを専攻し、それぞれ繊維業界に就職。田上さんはリネン工場に勤務し、福沢さんは働きながらテーラリングを勉強中とのこと。昨年のひつじサミット尾州には予定が合わず参加できなかったため、1年越しの念願が叶ってのツアー初参加。今回の密着取材のお願いにも快く協力してくれました。

名誉ひつじ団員に任命された2人といざ尾州のものづくりの魅力発掘ツアーに出発です。

岩田代表から名誉ひつじ団員に任命される福沢さん
(写真左)田上 綺架さん (写真右)福沢 大貴さん

ひつじサミット尾州の本拠地「三星グループ」

旅のはじまりは「三星グループ」(三星グループ)。ツアー参加者を最初にお出迎えしてくれたのは、サミットのアイコンでもあるひつじたち。ひつじサミット開催を機に近隣牧場と連携して期間限定で飼育し始めたとのこと。工場敷地内の除草という役割も担っているそう。

ベテラン社員講師による丁寧な説明で、1887年創業と歴史のある三星グループの事業の変遷とともに、羊毛から糸ができるまでの基本的な知識を学びます。

創業者の岩田志ま氏はなんと女性。ツアー参加者からも驚きの声が上がりました。繊維業界を取り巻く環境の変化にも果敢に挑戦し、乗り越えてきた三星グループの歴史を学ぶことで、先人たちが築き上げてきたものづくりへの尊敬の念が深まります。

ここは三星グループが誇るものづくりの集積地。世界最高峰の展示会である「プルミエール・ヴィジョン」にも出展実績のある三星グループのアーカイブの数々が並ぶ資料室では、見学者は自由に生地を見て、触れることができます。

次に見学するのは、実際に生地ができるまでの工程。三星グループでは、後継者がいない工場から織機を受け継ぎ、新たな命を吹き込んだ織工場「オリスタ」を2019年から稼働。オリスタで現在活躍している職人の一人は、ひつじサミットがきっかけで入社を決めたそう。「使い手」と「作り手」をつなぐひつじサミットの想いが形になったのだと思うと胸が熱くなります。

綜絖(そうこう)に経糸をセットする作業。綜絖の穴の一つひとつに経糸を通していくという気の遠くなるような作業を手で行う。熟練の職人になると複数の綜絖に同時に糸を通せるそう。

ガッチャンガッチャンという音とともに、目の前で織り上がっていく生地を見られるのはオープンファクトリーだからこその貴重な経験です。

技術だけでなく、そこで働く人の想いも引き継ぎ、次世代へつないでいく三星グループの姿勢からは、尾州の繊維産業の持続可能性にも貢献していこうという強い使命感が伝わってきます。

続く中編では、ひつじサミットの始まりの地である三星グループを後にして、国産の羊毛のブランディングにも挑戦する尾州で最も古い歴史を持つ毛織物メーカー国島株式会社にお邪魔します。

ものづくりの源流を訪ねて ひつじサミット尾州密着取材#2 に続く

プロフィール


國澤 あや乃(くにさわ あやの)

サステナブルセクションプロダクションチーム。タキヒヨーのものづくりやビジネスに取り組む姿勢に魅力を感じ、2023年入社。「学ぶ者」としての視点から_ for goodに関わり、サステナビリティのプロフェッショナルを目指す。


森 康智(もり やすとも)

採用プロジェクトチーム兼広報・IRチーム。2014年に東京大学大学院修了後、新卒でタキヒヨーに入社。新卒採用、キャリアコンサルティングやPRの専門知識を生かし、多様な人々の「問いと語り」によるシナジー創出を目指す。_ for goodのファシリテーター。


伊藤 千鶴(いとう ちづる)

広報・IRチーム。社内外の広報、情報発信に長く携わってきた“社内ジャーナリスト”。豊富な執筆、編集経験を生かし、_ for goodでは「中の人」としてライティングなどを担当。

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